ガイドライン

発ガン性などを含め健康影響に関する疫学研究の報告のほとんどは、低周波電磁波によるものでしたが、最近は携帯電話からの電磁波は脳に対する影響があるのではないか、とする研究も数多く出てきています。しかし現時点では電磁波と発ガン性の因果関係は断定できていないのが現状です。 世界各国や国際機関などが施行している電磁波予防ガイドラインまたは規制値は、一般的には人体安全の立場より企業側に立った緩やかなガイドラインまたは規制値です。

低周波交流電磁波に対するガイドライン・規制値

国際機関:ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)、WHO(世界保健機構)、IARC(国際ガン研究機構)がガイドラインを公表しています。このガイドラインは国際的な法的規制ではなく、各国に施行責任などはゆだねています。 人体安全の立場からのガイドラインも数カ国の国レベル、州レベルで、またはドイツ建築生物学(バウビオロギー)協会SBM2003ガイドラインなどが存在します。

国内外の低周波電磁波に関するガイドライン・規制値

 電界磁界
kV/m区分μT区分
国際レベル ICNIRP 5.0 (50Hz)
4.2 (60Hz)
ガイドライン 100 (50Hz)
83 (60Hz)
ガイドライン
WHO 10 ガイドライン 500 ガイドライン
IARC     「極低周波磁界」を発ガンリスク2B(人に対して発ガン性の可能性あり)に分類
  日本 3 規制 - -
米国 - - - -
ドイツ 5 規制 100 規制
スイス 5 規制 100 規制
オーストラリア 5 ガイドライン 100 ガイドライン
スウェーデン - - - -
州レベル 米国、
複数の州
- - 0.4 規制
その他 スイス
(住宅、病院、学校など)
- - 1 規制
スウェーデン
(TCO)
- - 0.2
@コンピュータから30cm
規制
建築生物学協会 ドイツ
(SBM2003)
0.001以下
問題なし
ガイドライン 0.002以下
問題なし
勧告値
0.001-0.005
少々問題あり
ガイドライン 0.002-0.01
少々問題あり
勧告値
0.005-0.05
問題あり
ガイドライン 0.01-0.05
問題あり
勧告値
0.05以上
非常に問題あり
ガイドライン 0.05以上
非常に問題あり
勧告値

スウェーデンやアメリカのカリフォルニア州などでは高圧電線の近くには、住宅や子供施設の建設禁止や、学校、病院の300m以内にある高圧電線の自主的な移設などを行っている電力会社もあります。 日本においては、残念なことに人体安全の立場からの電磁波低減ガイドラインや規制の動きはありません。

高周波電磁波に対するガイドライン・規制値

多くの国際的機関や諸外国では、マイクロ波などの高周波電磁波の電磁波曝露限度に関するガイドラインや規制などが施行されています。日本では電波防護指針が設けられています。国際的機関ICNIRPでは、900MHzの場合で約41V/m(4.46million μW/m2)、1800MHzの場合で約58V/m(8.92million μW/m2)と企業側に不利益にならない数値規制です。これに対して数カ国の国々では、厳しい規制値を設定しています。その中でもオーストリアのザルツブルグ州の規制値は室内1μW/m2、屋外10μW/m2と厳しい規制値です。また2013年から、スイスとリシュテンシュタインの二国が携帯電話基地局から放射される電磁密度を1000μW/m2までとする法規制を施行する事が決定しました。この数値は、1500MHzの時の日本の高周波規制値1000万μW/m2の1万分の1です。

低周波電磁波以上に人体に対する影響があると懸念されている高周波に関して、高周波のガイドラインや規制勧告値は、多くの学者、海外市民団体・機関(ドイツの環境自然保護連盟BUND、ドイツ建築生物学協会のSBM2003など)から発表されています。これらの勧告値は、オーストリアのザルツブルグ州の規制値と同様に厳しい数値設定です。

国内外の高周波電力密度規制値

 電力密度規制値
周波数電力密度(μW/m2
国際レベル WHO/ICNIRP 900MHz
1800MHz
4.5×106
9×106
WHO/IRPA 900MHz
1800MHz
2×1012
10×1012
国レベル 日本 900MHz
1500MHz
6×106
10×106
ドイツ 900MHz
1800MHz
4.5×106
9×106
ベルギー 900MHz
1800MHz
1.2×106
2×106
スイス 900MHz
1800MHz
4.2×104
9.5×104
イタリア 3MHz~3000MHz
(4時間以上被曝する場所)
9.5×104
ルクセンブルク 携帯電話基地局から被曝する場所 2.4×104
ポーランド 300MHz~300GHz 9.5×104
ロシア 300MHz~2400MHz 2.7×105
中国 300MHz~300GHz 9.5×104
州レベル オーストリア、
ザルツブルグ州
300MHz~300GHz
(屋外)
300MHz~300GHz
(室内)

10

1

市民団体
(勧告値)
ドイツ建築生物学
(バウビオロギー)協会
(SBM2003)
30MHz~3000MHz
(パルス波)
0.1以下 問題なし
0.1-5 少々問題あり
5-100 問題あり
100以上 非常に問題

高周波電磁波規制は高周波電力密度規制以外に携帯電話の電力比吸収率(SAR)の規制があります。 高強度の高周波電磁波には、電子レンジと同様に熱を生じるため生体に影響を与える可能性があります。この理由から、携帯電話などの無線機器などでは、人体の電力比吸収率(SAR: Specific Absorption Rate 単位は[W/kg])を用いた規制値が欧州の国際非電離放射線防護委員会や米国の連邦通信委員会などで施行されており、日本でも総務省が電波防護指針を設定し法規制が行われ、携帯電話のSARが「2W/kg」の許容値を満たすことが義務づけられています。理由は、携帯電話の熱作用による健康被害を防止するため、法律で電磁波によって吸収されるエネルギーが基準を超えないようにするためです。

国内外の高周波電磁波からの電力比吸収率 SAR規制値

 国際機関、国、
その他の機関
規制値測定値基準
日本 総務省 2.0W/kg 頭部(任意)組織10gあたりに吸収されるエネルギー量の平均値(6分間)
米国 FCC
(連邦通信委員会)
1.6W/kg 頭部(任意)組織1gあたりに吸収されるエネルギー量の限界値
韓国 情報通信部 1.6W/kg 頭部(任意)組織1gあたりに吸収されるエネルギー量の限界値
ICNIRP 国際非電離放射線防御委員会 2.0W/kg 日本と同じ測定値基準
TCO スウェーデン事務労働組合連合 0.8W/kg 日本と同じ測定値基準

国際的なガイドライン(ICNIRP)採用の日本の許容値は、スウェーデン(TCO)、米国(FCC)、韓国(情報通信部)などの厳しい基準値と比較すると、電磁波規制値・ガイドラインにおいては電磁波対策先進国であるとは言えません。また、中国やドイツなども厳しい基準値を検討しています。

国内通信会社の携帯電話機種別SAR 値(比吸収率)

大手携帯電話向け通信会社の中では、WILLCOMウィルコム製携帯電話機5機種が、現行機種のSAR値の低い順の上位5位を占めています。 WILLCOMウィルコムの低電磁波機種名は上位から、「WILLCOM LU」-0.0168W/Kg、「nico :ニコハート」-0.115♥W/Kg、「WX330K」-0.150W/Kg、「BAUM:バウム」-0.171W/Kg、「WX340K 」-0.193W/Kgです。

他の通信会社では0.1ケタ台のSAR 値(比吸収率)の機種はなく、NTTドコモの最少比吸収率機種は「N-07A」で0.244 W/Kg、au by KDDIの最少比吸収率機種は「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」で0.382 W/Kg、SoftBank ソフトバンクモバイルの最少比吸収率機種は、「930N」で0.541 W/Kgです。この例からも低電磁波の携帯電話を製造することは可能です。

国内各通信業者の携帯電話機種別SAR値一覧は、下記URLアドレスを参照してください。

NTTドコモ
FOMA:http://www.nttdocomo.co.jp/product/sar/foma/index.html
mova:http://www.nttdocomo.co.jp/product/sar/mova/index.html

au by KDDI
http://www.au.kddi.com/seihin/support/sar/index.html

SoftBank ソフトバンクモバイル(ボーダホン Vodafone)
http://mb.softbank.jp/mb/support/3G/product/sar/

WILLCOM ウィルコム 低電磁波で“あんしん”なウィルコムの電話機機種
http://www.willcom-inc.com/ja/ad/think_kids/lineup/index.html